「引用」とは

記事公開日: 2023/10/04 最終更新日:2026/08/06
引用の要件を満たす利用であれば、著作権者の許諾は必要ありません。ただし、著作権法上の引用は、日常的に使う「引用」より限られた範囲を指します。何が要件とされ、資料ごとに何を確認することになるのかを整理します。
引用には著作権法上の要件がある
一般には、他者の文章や図表を利用することを広く「引用」と呼びますが、著作権法上の引用は、これより限られた範囲を指します。第32条1項は、公表された著作物は引用して利用することができるとしたうえで、その引用が公正な慣行に合致し、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならないと定めています。
これらの要件を満たす利用は、著作権者に断ることなく行うことができます。一般的な言葉としての「引用」と区別するため適法引用と呼ばれることもあります。
要件を満たすかどうかは個別に判断される
公正な慣行、正当な範囲内という要件が具体的に何を指すかは、条文からは読み取れません。
裁判例では、引用する側とされる側の主従関係、引用部分が明瞭に区分されていること、引用の分量などが考慮されてきました。近年は、引用の目的、両著作物の性質、分量などを総合的に考慮して判断する裁判例もみられます。
第32条第1項は、引用の目的として報道、批評、研究を挙げています。どのような目的がこれに並ぶものとして扱われるかも、個別の事情のもとで判断されることになります。
引用に該当するかは資料ごとに確認する
自分の資料での利用が引用にあたるかどうかは、資料ごとに確認する必要があります。
第32条第1項が挙げる引用の目的にあたるか、引用部分が明瞭に区分されているか、また、引用の分量が目的に照らして正当な範囲にとどまっているか、といった点を確認します。前の節で挙げたとおり、裁判例ではこうした点が考慮されてきました。
あわせて、引用を行う際には、2つの点にも注意が必要です。
1つ目は、引用部分を翻訳して利用することが認められている点です(第47条の6第1項第2号)。ただし、同項が引用について認めているのは翻訳のみであり、翻案や変形は含まれていません。図表に手を加えて利用する場合には、この点が問題となります。
2つ目は、出所を明示する必要がある点です(第48条)。
引用に該当する場合でも許諾を取ることがある
引用にあたる利用であれば、権利者に連絡することなく進められます。ただし、その資料が公開された後に、権利者の目に触れることはあります。自分の研究成果が広く知られることを歓迎する権利者もいますが、知らないうちに特定の製品の広告に使われていたことを、好ましく思わない権利者もいます。事前に相談があれば認めたが、事後に知ったので受け入れられない、という場合もあります。
そのため、商用の資料では、引用に該当する利用であっても、権利者から事前に許諾を得ておくという進め方が取られることがあります。
まとめ
- 引用の要件を満たす利用であれば、著作権者の許諾は必要ない
- 要件を満たすかどうかは、条文だけでは決まらず個別に判断される
- 翻案や変形を伴う場合、出所を明示しない場合は要件から外れる
- 引用にあたる利用でも、権利者から許諾を得るという進め方がある
「引用」という言葉は日常的にも使われますが、著作権法上の引用は、条文が定める要件を満たす利用に限られます。資料への図表や文章の利用が引用にあたるかどうかは、資料ごとに確かめることになります。
*当社では、引用に該当するかどうかの判断は行っておりません。判断が必要な場合は弁護士にご相談ください。掲載内容はあくまで当社の見解です。個々の事案についての判断の参考にお留めください。内容についても、執筆当時の状況におけるものであることをご了解ください。万一、ブログの内容の利用により何らかの損害が発生しても、当社は一切の責任を負いません。

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