「著作物」とは

記事公開日:2023/10/04 最終更新日:2026/08/06
著作物とは、思想または感情を創作的に表現したもので、文芸・学術・美術・音楽の範囲に属するものをいいます(第2条1項1号)。著作権は著作物にのみ生じますが、著作物にあたらないものについて許諾を取ることもあります。医学分野で何が著作物に該当するのかも含めて、簡単に整理します。
著作物は4つの要件で定義される
我が国の著作権法は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています(第2条1項1号)。この定義は、次の4つの要件に分けて考えられています。
- 思想又は感情
高度な学問的・芸術的内容までは求められず、人の思想や感情が表れていれば足りると解されています。人の思想や感情を伴わない単なる事実やデータは、著作物には該当しません。 - 創作的に
著作者の個性が何らかの形で表れていればよく、芸術的な価値や高度な創作性までは求められません。誰が表現しても同じようになる「ありふれた表現」には、創作性は認められません。 - 表現したもの
思想や感情それ自体(アイデア)は保護されず、形にして表現されて初めて著作物として認められます。 - 文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの
文芸・学術・美術・音楽などの文化的な創作物が対象です。工業製品などは、原則として著作物には該当しません。
もっとも、この4つの要件を当てはめれば必ず結論がひとつに定まるとは限りません。実際には、著作物に該当するかどうかが裁判で争われることもあります。
論文や図表も著作物になりうる
医学分野では、論文や書籍のほか、講演内容やスライド、Webページなども著作物になりえます。論文中の図、表、イラスト、写真は、論文という著作物の一部であると同時に、それ自体が著作物になることもあります。
一方で、単純なグラフや表は、著作権法上の「著作物」にはあたらないこともあります。ただし、それによって直ちに許諾を取らなくてよいことになるとは限りません。
著作物にあたらなくても断りを入れることがある
医学分野では、著作物に該当するかどうかにかかわらず、利用にあたって断りを入れることがあります。
学術分野において、先行する業績を利用する際に断りを入れるという慣行があります。医薬品のプロモーション資材で使用される論文や図表は、研究者が長い時間をかけて生み出した成果であり、学会や出版社がその発行と流通を担っています。そのため、著作権法上の許諾の要否とは別に、その成果を利用させてもらうという立場から、断りを入れておくという考え方があります。
著作物に該当しないものであれば、著作権は発生しません。ただし、著作物にあたるかどうかは外形から決めきれないことがあり、著作権法上の位置づけだけで手続きの進め方が決まるわけではありません。
まとめ
- 著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものをいう
- 著作物にあたるかどうかは、4つの要件を当てはめて判断される
- 医学分野では、著作物にあたらなくても断りを入れることがある
著作物の定義は条文に示されていますが、当てはめた結果がひとつに定まるとは限りません。医学分野で他者の著作物を利用する際は、著作権法上の位置づけに加えて、その分野の慣行や、著者・学会・出版社との関係も踏まえて考えることになります。
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