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「著作物」とは

「著作物」とは

著作権を得るには、法律上の「著作物」であることが必要です。
それでは「著作物」とはどのようなものを指すのでしょうか。簡単に解説します。

「著作物」の定義

我が国の著作権法における「著作物」とは、次のように定義されています。

 「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」(第2条)

ここで、定義をより細かく確認していきます。

「思想又は感情」
高度な学問的あるいは芸術的な内容を問うものではなく、人の思想や感情が現れているものであれば足りる、と解されています。人の思想や感情を伴わない「単なる事実やデータ」は著作物から除かれます。

「創作的に」
著作者の個性がなんらかの形で発揮されていればよく、芸術作品のように高い創作性までは求められておりません。また、誰が表現しても同じようなのものになる「ありふれたもの」には創作性があるとはいえません。

「表現したものであって」
思想・感情それ自体(アイデア)は保護の対象にはならず、形にして(表現されて)初めて著作物として認められます。

「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」
工業製品などが著作物から除かれます。


定義だけ見ても、イメージすることはなかなか難しいかもしれません。この「著作物かどうか?」というテーマは、裁判においても争いになることが多く、法律のプロでさえも判断が分かれると聞きます。

学術分野における著作物

医学分野における著作物の例としては、論文、書籍などはもちろん、講演やスライド、 Webページなども著作物になり得ます。論文中の図、表、イラスト、写真なども、論文という著作物の一部ですが、それ自体も著作物になる場合が多いと考えられます。 シンプルなグラフや表は著作権法上の「著作物」とは言えないケースも有り得ますが、医学分野における転載許諾実務においては、著作物ではない=許諾を取らない、という図式が必ずしも成り立つわけではありません。

トラブルを招かないこと

著作物でなければ、著作権は発生しないため、それを利用しても著作権法上の問題は起きません。ただ、医学分野における転載許諾実務では、著者・出版社の立場や学術研究における慣行にも留意し、「トラブルを招かない」という観点が大切になります。特に自然科学論文における図表は、論文のエッセンスというべき特別なものであり、著者・出版社や学会も非常に敏感なように思います。著者が多大な労力をかけて得られた研究成果であり、出版社や学会もその編集・発行・流通に尽力しています。「シンプルな図表だから」という理由だけで、断りなしに利用するのは彼らにとって違和感を持つのは容易に想像できます。最近では、著作権法ではセーフな「無断利用」であっても非難を集める事例もありますから、慎重に考える必要があります。

まとめ

  • 「著作物」でなければ著作権は生じない
  • 許諾実務では著作物でなくても、利用許諾を取る場合がある

著作物の定義について触れましたが、実際の「著作物かどうか?」の判定はなかなか難しいように思います。
いかにリスクを少なくするかにおいては、法的な観点だけでなく、置かれている業界のルールや慣行、相手への敬意といった側面からも考える必要がありそうです。


掲載内容はあくまで当社の見解です。個々の事案についての判断の参考にお留めください。内容についても、執筆当時の状況におけるものであることをご了解ください。万一、ブログの内容の利用により何らかの損害が発生しても、当社は一切の責任を負いません。

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