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他人の著作物を使うには?【著作権一般】

他人の著作物を使うには?【著作権一般】

弊社では医学分野の著作権処理を専門に行っておりますが、この記事では分野を問わず、一般的に他人の著作物を利用する場合、どのようなことに気を付ける必要があるのかご紹介します。

目次

  1. 著作物を使う際の手順を知ろう
  2. 著作物を利用する上で気を付けるべき点を5つのステップで確認します。
  3. 無断での利用は罰せられる?
  4. 無断利用は、法律で罰せられる場合があります。
  5. 著作隣接権とは?
  6. 実演家、レコード製作者、放送事業者、有線放送事業者には「著作隣接権」という権利が与えられます。
  7. まとめ

著作物を使う際の手順を知ろう

他人の著作物を使う場合には、次の手順で確認していく必要があります。

1. 著作権法上の著作物かどうかを検討する

2. 我が国で保護される著作物かどうかを検討する

3. 保護期間内のものか調べる

4. 例外的に「無断で使える場合」か検討する

5. 著作権者を調べて許可をもらう

著作権法上の著作物かどうかを検討する

著作権法上、著作物とは「a)思想または感情を b)創作的に c)表現したものであって d)文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています(著作権法2条1項1号)

a) 人の思想または感情を伴わないものは著作物になりません。
例えば、「本日の最高気温は30℃」という事実やデータは著作物から除かれます。

b) 創作した人の個性が多かれ少なかれ表れていれば著作物となり得ます。
重要なのは個性の有無であって、技術的な上手・下手は関係なく、プロのイラストレーターが描いた絵はもちろん、幼稚園児が描いた絵であっても著作物となります。反対に、ありふれた表現、すなわち誰が表現しても同じようになってしまう場合は創作的な表現とは言えず、著作物から除かれます。

c) 著作物として保護されるためには、作品として具体的に表現される必要があります。
頭の中のイメージやアイデアは、それ自体が著作物となりません。例えば、「未来から来たネコ型ロボットが不思議な道具を使って、小学生を助けてくれる」というストーリー自体はアイデアに留まるため、著作物とはなりません。このストーリーを漫画やアニメ、小説として具体的に表現されて初めて著作物として認められます。

d) 工業製品などは著作物から除かれます。

著作権法は「著作物」を保護する法律のため、「著作物」でなければ著作権法上は自由に利用が可能です。
「著作物」であれば次のステップに進みます。
※その分野の慣行や権利者との関係性によって、「著作物」ではなくとも、許諾取得が推奨されるケースはあります。

我が国で保護される著作物かどうかを検討する

我が国の著作権法によって保護を受ける著作物は、次のいずれかに該当するものです(第6条)。
・日本国民が創作した著作物
・最初に日本国内で発行された著作物
・条約により我が国が保護の義務を負う著作物

もし、このいずれにも該当しない場合は、日本では許諾を取らずに利用可能です。
該当する場合は、次のステップに進みます。

なお、次の著作物については、権利の目的とならないため、許諾を取らずに利用可能です(第13条)。
・憲法その他の法令(地方公共団体の条例、規則を含む。)
・国、地方公共団体又は独立行政法人・地方独立行政法人の告示、訓令、通達など
・裁判所の判決、決定、命令など
・上記の翻訳物や編集物(国、地方公共団体又は独立行政法人・地方独立行政法人が作成するもの)

保護期間内のものか調べる

著作権は永遠に保護され続けるものではなく、一定期間が経過すれば消滅します。
著作権が消滅した後は、社会全体の共有物(パブリック・ドメイン)として、誰もが自由に利用ができます。
そのため、今まさに利用しようとしている著作物の権利が現在も存続しているかを確認しましょう。
著作権の保護期間は、以下の通り著作権法で定められています。 

・実名(周知の変名を含む)の著作物 ・・・著作者の死後70年
・無名・変名の著作物 ・・・公表後70年
・団体名義の著作物 ・・・公表後70年
・映画の著作物・・・公表後70年

※詳細は条文を確認してください。
※変名とは実名の代わりに用いられるペンネームやニックネームなどを指す。
※一部の外国作品においては、「戦時加算」という制度により著作権の保護期間が延長されている場合があるため注意。

著作権が消滅していれば、許可をとらずに利用することができます。
保護期間内である場合は、次のステップに進みます。

例外的に「無断で使える場合」か検討する

著作権が保護期間内であっても、一定の条件を満たせば、著作権者の許可を取らずに利用することができるという規定があります。

・私的使用のための複製(第30条)
・付随対象著作物の利用(第30条の2)
・検討の過程における利用(第30条の3)
・引用(第32条)

等があります。
このような「著作権の制限」が適用できる場合は、著作権法上、著作権者の許可をとらずに利用することができます。適用できない場合は、次のステップに進みます。

著作権者を調べて許可をもらう

著作権者から利用許可を得る必要があると分かった場合は、まずは著作権者が誰で、どこに連絡すればよいかを調べましょう。
著作権者が分からなければ、発行元に確認するのが一般的かと思います。書籍であれば出版社に、Webサイトであればサイト運営元に問い合わせるとよいでしょう。ただし、著作権者と著作者が異なる場合もあるため、注意が必要です。著作者が著作権を譲り渡していることもあり、著作者の許可をもらっても、著作権者の許可を取ったことにならない場合があります。
利用の許可をもらうためには、著作物の利用方法をなるべく詳しく伝えることが重要です。著作権者に利用方法が十分に伝わっていないと、後のトラブルの原因となります。また、途中のやり取りの記録を残したり、最終的な諾否・許諾条件が分かるよう書面で許可をもらうようにしましょう。

無断での利用は罰せられる?

著作権者に無断で著作物を利用した場合は、著作権侵害として刑事罰の対象になる場合があります。
原則として、著作権者が「告訴」を行うことを前提に、「10年以下の懲役」又は「1000万円以下の罰金」(併科も可)という罰則規定が設けられています(第119条第1項)。著作権を侵害した人が個人ではなく会社などの場合の罰金は「3億円以下」となります。
このほかにも、著作権者が裁判所に訴訟を申し立てることによって、著作権者が受けた損害の賠償や侵害行為の停止などを求められる場合があります。

著作隣接権とは?

著作権は著作者(著作物を創作した者)に与えられるのに対し、著作隣接権は「著作物を伝える人」に与えられます。我が国の著作権法では、歌手や俳優などの「実演家」、レコード会社や放送局などの「レコード製作者」「放送事業者」「有線放送事業者」が著作隣接権者となります。それぞれの著作隣接権者に応じて、権利が定められています。

実演家の権利

実演家人格権 氏名表示権
同一性保持権
著作隣接権 録音権・録画権
放送権・有線放送権
送信可能化権
譲渡権
貸与権
二次使用料を受ける権利
貸レコードについて報酬を受ける権利

レコード製作者の権利

著作隣接権 複製権
送信可能化権
譲渡権
貸与権
二次使用料を受ける権利
貸レコードについて報酬を受ける権利

放送事業者及び有線放送事業者の権利

著作隣接権 複製権
再放送権・有線放送権、放送権・再有線放送権
送信可能化権
テレビジョン放送の伝達権、有線テレビジョン放送の伝達権



著作権と著作隣接権は重なり合って働くため、たとえばCDに録音されている音楽をコピーする場合は、歌詞や楽曲の著作権のほか、アーティスト等の演奏・歌唱、レコードの著作隣接権が関係します。このように、音楽作品や映像作品を利用したい場合、著作権だけでなく、著作隣接権にも留意が必要となります。

著作隣接権の保護期間は、次のとおりです:
実演・・・実演が行われた時から70年
レコード・・・レコード発行後70年
放送・・・放送が行われた時から50年
有線放送・・・有線放送が行われた時から50年

まとめ

無断で著作物を利用した場合は、著作権侵害として罰則の対象になったり、著作権者に与えた損害を賠償したりしなければなりません。そうならないよう著作物の利用にあたっては、正しい手順で確認していきましょう。 また、著作権とは別に、歌手や俳優、レコード会社などが持っている著作隣接権という権利が関係する場合があります。


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