図表を改変して掲載したい場合、許諾は取れるのでしょうか?

医学論文などから図表をそのまま転載する場合は許諾が得られやすいと聞きます。では、図表の一部を改変して掲載したい場合、許諾は得られないのでしょうか? 改変の許諾申請実務について簡単に解説します。
改変を認めるかは権利者の判断
図表を改変して自身の資料に掲載したい場合、権利者に改変利用の旨を伝え、その許可を得る必要があります。そして、その改変を認めるかどうかは各権利者の判断に委ねられます。やはり医学分野においては改変に対して厳格に見られることも多いため、権利者の方針によっては改変利用が認められないケースもあります。改変に対する許諾方針をホームページ等で掲げている権利者もおりますので(特に国内の学会様)、事前に確認しておくことをお勧めします。
どのような変更が「改変」なのか?
では、どのような変更が「改変」とされるのでしょうか。当社は20年以上にわたり医学分野の著作権処理・転載許諾申請業務に取り組んでまいりましたが、この分野においては、元図表に対して、データの追加や削除、過度な色調の変更、製品名の追記、特定箇所の強調等は、権利者から改変とみなされることが多いです。もし、このような変更を検討されているのであれば、「改変」として取り扱われる可能性が高いことを留意しておくとよいでしょう。
改変申請では制作物原稿はチェックされる?
通常、各権利者が指定する手続き方法に準じて許諾申請を出すことになりますが、国内権利者の場合、大半は申請資料として「制作物原稿」の提出が求められるため、実際の改変具合を権利者がチェックし、諾否を判断されるケースが多いかと思います。
一方で、海外権利者の場合、制作物原稿のチェックまでは行われず、利用者名や媒体、利用開始時期などの利用詳細の申告のみで許諾書が発行されることも珍しくありません。そのため、申請者側から改変したい旨を申し出なければ、「改変利用について権利者の許諾を得た」とは言えない事態が起こり得ます。これが国内権利者への申請と大きく異なるポイントです。 なお、海外権利者に改変したい旨を申し出ると、そのチェックのために制作物原稿を要求されることがありますが、その際、英語に翻訳された原稿を求められる場合があります。
そのほか、改変申請の留意点
そのほか、改変申請を行う際の留意点としては、
- 手続き期間が長期化すること
- 審議結果が出ないうちに制作を進行しないこと
などが挙げられます。 やはり、図表等をそのまま転載利用する場合とは異なり、一部変更が加えられるため、権利者側も慎重に諾否を判断されます。通常の申請と比べて、審議に時間を要することがありますので、スケジュールには余裕を持って申請されることが望ましいです。
また、場合によっては「改変不許可」もあり得ます。たとえ改変せざるを得ない事情があったとしても、権利者から「原図の通りに修正してください」と指示が入ってしまえば、それに従わないと利用ができないため、見切り発車で制作を進行することがないようにしましょう。
まとめ
「改変せずに使用する」のが最善ですが、様々な事情によって改変せざるを得ないケースもあるかと思います。
権利者・関係者へのリスペクトを忘れずに、適切な許諾処理が求められます。
掲載内容はあくまで当社の見解です。個々の事案についての判断の参考にお留めください。内容についても、執筆当時の状況におけるものであることをご了解ください。万一、ブログの内容の利用により何らかの損害が発生しても、当社は一切の責任を負いません。

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