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「投稿論文」中に第三者の図表を使う場合、許諾が必要ですか?

Q3.「投稿論文」中に第三者の図表を使う場合、許諾が必要ですか?

A3. 我が国の著作権法上では必要ないケースも多いですが、海外では許諾を取って使うようにという指示が投稿規程にあることが多いようです。

研究者の方の名前で投稿する論文の中で第三者の図表などをそのまま転載している場合、学術論文の投稿であれば、我が国の著作権法第32条の規定により、許諾なく利用できる、というのが原則です。ところが実際はそのようにシンプルに考えることができない場合が多くあります。

理工系の学術出版者が集まる国際的なSNSサービスに、4月の末にある非営利団体の編集者から次のような投稿が掲載されました。

「自分のところで、出版する書籍(Book)については、第三者から許諾を取る必要があれば著者のサポートをおこなっているが、Journalについては著者の責任で許諾を取ってもらっている。論文は数が多すぎてそのようなサービスは出版社としてはできない。最近ある著者から出版社が自分に替わって許諾を取ってくれていた、と言われたが、そのようなことはあるのか?」

これをめぐって数日間にわたり、筆者も含めて30以上のコメントが寄せられたのですが、一連の議論は理工系出版社の考え方が見事に示される結果となりました。
当初の質問に対しては、このSNSのメンバーの多数を占める出版社の編集者らから「著者の責任で取ることになっている」というのが圧倒的でした。
実際海外の投稿規程では、そのようになっていると筆者も思います。

ところが、ある海外大手製薬企業の研究者が「そもそも論文投稿になぜ許諾を取る必要があるのか?」と問いかけたために議論の方向は、許諾を取る必要があるのかないのか、という方向へ進みます。研究者(イギリス?)の意見は冒頭に書いた我が国の32条と同じような観点であり、筆者の考えも当然我が国の著作権法に沿って、そのように考えますが、コメントを寄せる多くの出版社からは「どういう内容や目的であれ、許諾を取るべき」という集中砲火のような状況になってしまいました。

著作権法の問題と投稿規程上の定めの問題を混同した議論になってしまったような感があり、結局スレッドを開始した人が幕引きをすることで終結を見ました。

一連の議論から次の事がわかります。

・出版社は、どうであろうと、著作物の利用には許諾が必要と考えている。
・著者は伝統的な考えに従い、許諾は不要と考えている。
・誰から許諾を取るか、という議論は中心ではなかったが、著者から許諾を取るという話は全く出ず、出版社から許諾を取るものという前提を感じさせた。

著作権法上は不要であっても、投稿規程で許諾を取るように定められていれば、従わなければ規定に沿わないことになります。

著作権法上は不要であるという議論が膨らまなかったのは議論の出発点上仕方ないのですが、ほぼ全ての出版社が非常に強力に許諾を取るべしと主張していたことには改めて著者よりも出版社が強い欧米の文化的伝統を感じました。


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