HOME>米国癌学会(ACS)、乳癌検診に関する新ガイドラインを発表
 

米国癌学会(ACS)は、10月20日、乳癌検診に関する新ガイドラインを発表した。このガイドラインでACSは、マンモグラフィによる乳癌検診について、45歳から54歳の女性には年1回の実施を、また55歳以降の女性については、隔年での実施を推奨した。またACSは、マンモグラフィによる検診は、健康状態が良好で、少なくとも向う十年間、余命が想定される間は継続されるべき、とした。この新ガイドラインは、医学誌の Journal of the American Medical Association (JAMA)に10月20日付けで掲載された。

 

先のACSのガイドラインは、マンモグラフィによる乳癌検診の開始推奨年齢を40歳としており、また55歳以降についても毎年検診を実施するよう推奨していた。それだけに、今回の改定は、ACSのマンモグラフィ検診への方針を大きく変える内容である。ただしこれらの変更の一方で、ACSは、55歳以上の女性においても、年1回の検査を継続する選択肢は認められるべきであること、また、40歳より年1回検査を開始することについても、女性個人の選択肢として認められるべきであるとの考えを記した。

 

ちなみに、日本の場合は、国の方針として、マンモグラフィと視触診などの他の検診併用による乳癌検診が、40歳以上の女性を対象に隔年実施とされている。

 

今回のマンモグラフィによる乳癌検診の年齢および頻度に対する推奨内容の変更の理由を、ACSでは、先のガイドライン発行以来、マンモグラフィ検診におけるメリットと欠点の両方が、数々の臨床試験によって明らかになってきたため、と説明している。そして、ACSのChief Cancer Control OfficerであるDr. Richard C. Wenderは、ACSのプレスリリースにおいて、「マンモグラフィ検診の開始年齢については、今後も論議が継続すると考えている。」と語り、「今回のガイドラインは、すべての女性が45歳までに検診を開始すべきであることを明確にしたものだ。この年齢で、検診の利益ははっきりと損害を上回る」と述べている。

 

55歳からの検診頻度を、それまでの年1回から、今回、新たに隔年へと変更した背景には、新ガイドラインの発表と同時に医学誌の JAMA Oncologyに掲載された、新しい研究結果の存在がある。この研究では、閉経後の女性の乳癌の進行スピードは隔年検診で十分対応可能な速度であり、年1回の頻度での検診実施には、偽陽性(実際には癌ではないのに癌があると疑われる)の確率を上昇させる危険性がある一方で、付加されるメリットはごく僅かでしかないことが示唆された。

 

ACSでは、本ガイドラインは、平均的な乳癌リスクをもつ女性を対象にしたものものであり、家族歴などから、ハイリスクと考えられる女性については、より若い時期から頻繁な検診の実施を喚起している。

 

マンモグラフィによる乳癌検診は、早期の乳癌検出のために実施されるが、診断結果が偽陽性や偽陰性(癌の見逃し)となる場合や、過剰診断を招くことがあることが知られている。

 

ACSが今回示したマンモグラフィ検診への方針は、 定期的検診の開始推奨年齢を50歳とする米国予防医学専門委員会(USPSTF)と、定期的な年1回の検診を40歳で開始することを進める米国放射線医学学会(ACR)はじめとした複数の専門学会がとる方針との、ちょうど中間的立場となる。専門医の学会間で、マンモグラフィの検診に対する共通認識が欠けていることから、一般の患者や医療従事者にとって、分かりにくいことは否めない、との指摘も、医師や乳癌の啓発運動に取り組む非営利団体などから上がっている。

 

本ガイドライン:

http://jama.jamanetwork.com/article.aspx?doi=10.1001/jama.2015.12783

 

ACSが発行した本ガイドライン改定に関するニュース記事:

http://www.cancer.org/cancer/news/news/american-cancer-society-releases-new-breast-cancer-guidelines

 <Health Beat 提供 2015年10月28日>