著作権判例・事例紹介

学術分野の著作権事例紹介

ランチョンセミナーで他の論文を利用したい

 

学会ランチョンセミナーなど、企業がスポンサーのセミナーで先生が図表を利用する場合の許諾申請の手続きのご依頼です。

 

この場合、先生が自身で発表されるものは「引用」の適用になるのではないか、との考えられます。ある出版社におたずねしたところ、先生が発表の中で利用するのは学術利用=適法な引用の要件を満たしていれば許諾不要であるとのご返事を得ました。またその発表に付随して会場で配布するハンドアウト 程度であればそれも許諾は不要であると。ただし、その記録を企業がリーフレットなどにして印刷する場合は、別途許諾が必要になる、という解釈でした。ですからのちにランチョンセミナー記録集という、配布物を作成される場合には、その中で利用されている図表などについては、無断利用にならないかのチェッ クが必要になってきます。ご依頼者にそのようにお伝えし、ご依頼により必要な許諾書類を作成して申請をいたしました。


あくまで一つの出版社の解釈であり、他の出版社にはそれぞれお考えがあると思いますが、参考にしてください。

 

In press論文の図表を使いたい

 

まだ論文は出ていないのだけれど、許諾は取れますか?というご依頼がきました。

 

最近、In press段階のものを利用したいというケースが増えています。

まず、オンラインジャーナルの一般化により、In pressの様態も変わっていることを把握しておく必要があります。

印 刷物しかなかった時代なら文字通り、In press(印刷中)、だったのですが、現在は海外誌の多くで電子版が印刷版よりも早く公開されます。しかも、査 読完了だが、まだ掲載号などが決まっていない段階のものもあれば、単純に本誌が発行される前に先に載っているだけの場合もあります。

 

どの 段階から二次利用を許すか、というのは著作権者のポリシーですが、実際の事例では海外誌の多くは、サイトに公開されていれば二次利用の許諾は取れています。また一 般的には論文がアクセプトされた時点で著作権を出版社に譲渡していると思われますが、公開するかどうかは「著作者人格権」として著者の権利です。
従っ て、公開されていないIn pressは出版社(著作権者)および著者の双方の許諾が必要であり、公開されている場合は、出版社(著作権者)の許諾があればOKと言うケースがほとん どであると言うことになります。ただし公開されていないものについては二重投稿にあたる危険があり、もし著者の先生が了解されたとしても掲載誌のルールに抵触する危険があり、十分注意が必要です。

 

そのような事例をご紹介し、ご依頼によって出版社に問合せ、許諾をえて利用することができました。

 

 

WHOの出版物をプロモーションで利用したい

 

経済のみならず疾病についても「グローバル化」が進んでいるようで、WHOなどの国際機関が発行する資料の利用希望も増えてきています。WHOが発行するニュースレターからの図表の転載を申請してほしいとのご依頼がありました。

 

ところが、WHOは二次利用に関して、販売目的や企業の利用、および研究目的であっても大量の部数などの場合は無断で利用してはならない=許諾をとれ、としています。そのため、ご依頼者の利用目的、掲載メディアなどを詳しくお聞きして、WHOのポリシーに沿うかどうかの検討を行いました。

 

一般的に海外の学会や公的機関の著作物の利用で、商業利用を制限する場合に必ず書いてある注意書きは、「does not endorse any specific company nor products」といった文言です。つまり、特定の企業や製品を推奨するものではない、ということです。
ですから、そのように取られかねない利用方法はできない、ということになります。

WHOにも同様の文言があり、今回の事例でポリシーを明確にする必要があったため、この意味を担当者に聞くと、「一般的な文章でWHOの情報を提供するのは問題ないが、特定の製品や特定の目的のプロモーショナルサポートとして使うのは駄目だ」というコメントが戻ってきました。また、、「in association with commercial nor promotional activities」は許諾しないとも書いてきました。

 

WHOの情報が「直接に」特定の製品をサポートすることは少ないはずです。その一方で形式的には、資材の中でWHOの情報を使っている以上、そのことが結果的にWHOの情報がプロモーションをサポートしたことになる、と言えるように思います。
そう考えれば、やはりWHOの情報は資材では使えないのかということになります。

 

今回はWHOの情報自身を情報として配布するようなケースでしたので、そのような場合は、企業活動の一部には違いありませんが、製品のプロモーションではないとも考えられます。WHOのポリシーをお伝えして、ご利用されるかどうかのご検討をしていただくことになりました。

 

形式的に厳しく考えればすべてNGになるでしょうし、内容的にケースバイケースで考えれば使えるケースもあるはずですから、WHOのポリシーだけでなく、利用する側のポリシーも同時に求められているということになります。

 

 

 

出版物の表紙を使いたい

 

資材で紹介している内容が載っている書籍や雑誌の表示を掲載したいが、そもそも表紙の許諾は必要なのか、というご依頼でした。

 

表紙が「著作物」であるかどうかはともかく、出版社の許諾を得るべきだと思います。ただし場合によっては、著作権者が必ずしも出版社であるとは限りません。写 真やイラストを使っていて、その作者に著作権がある場合もあります。また雑誌などの場合では雑誌名や発行団体のロゴが商標権なども関係してくるケース もあります。

表紙などは著作権の問題というよりも、書名・雑誌名という「ブランド」にただ乗りしているといった、不正競争防止法や民法上の不法行為といったより一般的な法律で問題になる可能性があります。

 

今までの経験では、書籍の場合はOKのケースが多かったように思います。ところが雑誌の場合は出版社に許諾してもらえないケースが多い。雑誌に関しては、転載されることによって、その記事の内容と雑誌、または発行母体の団体などが直接関係があるかの印象を与えることを避けているように思われます。

 

以上の状況をご説明し、ご依頼によって出版社へ問合せましたが、残念ながら雑誌の表紙の二次利用は許可しないという返事となりました。

 

 

孫引きの許諾と出典の表記はどうすればよいか

 

資材に使った図表が孫引きでだったが、どちらから許諾をとるのか、また出典の表記はどうすればよいかというご依頼者からの質問です。

まず、著作権法上、「孫引き」とはオリジナルの複製ないしは二次的著作物ということになります。そしてその場合、オリジナルの権利と孫引きの結果できた二次的著作物をの両方に権利が発生します。

 

具体的に、表の孫引きのケースは次のような場合が考えられます。

(1)A(元 のデータ)→B(独自に作成した図表など)→C(転載した資材等)

この場合、Bに著作権があり、著作権法的には許諾をとる相手はBです。出典についてはCはBの出典のみ書けばOK、のようにも考えられますが、学術情報の性格から元データの出典も書くべきです。

許諾を取ったことと、出典を書く書かないは別です。特に学術情報の世界では当然 データの出典は書くべきです。

さらに、Bの図表に出典としてAが記載されていたら、それをわざわざ消すのか、ということ にもなります。「データはXXXから」と書いてあれば当然それも一緒に写すべきでしょうし、仮に参考文献番号が付けられているだけであったとしても、 きちんと出典を書くべきです。

(2)A(著作物とみなせる図表)→B(それを元にした図表)→C(Aからとも、Bからとも取れる転載利用)

この場合は、Bが独自の著作物なのか、それともAの複製なのか、二次的著作物なのかでややこしいです。

本来ならAから転載したと言えるようにするのが、そもそも学術論文の原則でしょうし、許諾も一度ですむので良いのですが、見栄えの良いBを使いたいというと、AもBもとらないといけないというややこしいことになります。

 

今回の場合は(1)に当たるケースでしたので、まずBに連絡し、その結果、Aにも連絡してほしいとのことでしたので、Aにも連絡し、双方から許諾を得たうえで、データの出典を付加した表記をおこないました。

 

 

 →こちらのブログもご覧下さい「(c)_permission学術分野の転載許諾

 

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