HOME>プリンスの死、オピオイド系薬剤の危険性を喚起
 

先月、世界的なポップスターであるプリンスが急死したことを受けて、米国では鎮痛剤のオーバードース(過量服用) 問題がクローズアップされています。

 

プリンスの大ヒット曲「パープルレイン」がブレークしたのは1980年代ことですが、彼の死を伝えるTVやオンラインニュースでは、全身を紫の衣装に包んだプリンスがこのヒット曲を歌う姿がよく映し出されました。正式な解剖結果はまだ発表されていませんが、プリンスは、亡くなる1週間前にもオピオイド系鎮痛剤の服用で意識不明となり、プライベートジェットを緊急着陸させる騒動を起こしています。また亡くなった時の彼の所持品からも鎮痛剤が見つかっているということで、おそらく死因はオピオイド系鎮痛剤のオーバードースという見方がもっぱらです。

 

オピオイド系薬剤は、広く疼痛治療で処方されていますが、極めて依存性が強いことが問題となっています。

 

米国疾病予防管理センター(CDC)がまとめた最新データによると、2014年、米国ではオピオイド系薬剤のオーバードースによる死亡者数が、過去最大の4万7,055人に達しました注1。その増加要因の最たるものが、処方された鎮痛剤の誤使用と乱用、それにヘロインを主とした不法薬物の使用増加です。この種の鎮痛剤の処方量は1999年から2014年にかけて約4倍増加しています。自動車事故と比べても、薬物のオーバードースによる死亡者数は1.5倍と言いますから、非常に深刻な社会的問題となっています。

 

政府は、この鎮痛剤のオーバードース問題への対策の1つとして、今年3月、プライマリーケア医師に向け慢性疼痛管理におけるオピオイド系鎮痛剤の処方の仕方について勧告を出すなど、動き出していましたが、さらに先週、米国の連邦議会の下院は、オーバードースの救済を目的とした様々なプログラムへの資金提供を認める法案を可決しました。

 

現在は大統領選挙を間近に迎えて、何かと政党間の違いが鮮明になる時期ですが、今回の法案は、共和党と民主党の両議員から広く支持されて可決されました。このこと自体が、米国における鎮痛剤のオーバードース問題の深刻さを如実に物語っていると思います。

 

上院でも、オーバードースの治療や防止を目的とした法案が既に可決されており、今後は、両院の法案の違いが協議されることになると思われます。そしてオバマ大統領の署名を受ければ、法案は法律として施行されます。

 

異才して知られたプリンス。彼の死は惜しまれるばかりですが、彼の死が、オピオイド系鎮痛剤のオーバードース問題の深刻さを改めて社会に喚起し、早急な対応策の構築を推進する起爆剤となっていることは間違いありません。

 

注1:http://www.cdc.gov/media/releases/2015/p1218-drug-overdose.html

 

注2:http://www.cdc.gov/mmwr/volumes/65/rr/rr6501e1.htm

<Health Beat 提供:2016年5月18日>